地理人研究所では、過去に20回ほど「空想地図をつくるワークショップ」を実施しています。しかし、空想地図を作ると何が良いのでしょうか?
物事をより立体的に、深く見る、眠った想像力を発掘する
空想地図を作れたところで、すぐ役に立つとか、何かが劇的に変わる、ということはありません。空想地図のワークショップは、いわば子供の頃以来使っていなかった筋肉をほぐし、鍛え、視野を広げるような機会です。筋肉というのはたとえ話で、「自分の手で面的な想像力を広げる経験」と言ったほうが正確です。子供の頃に経験した人もいればいない人もいますが、現代の都市の日常は、断片(点)は認識できていても、他の事象や場所とのつながり、関連性、ストーリーを考える機会はなかなかありません。
「ここに古い街があるけど、なんで古くからあるのか」「こっちの街と向こうの街の間は隔たりがあるけど、なんで行き来がないのか」…本当は、現実の街でも考えればおもしろいのですが、なかなか機会はないものです。空想地図ワークショップは、手を動かしながら、そんな広がりや因果関係を自然と考えてしまうプログラムです。そんな複雑な想像力ない…と思っている人でも、眠った想像力が引き出されます。
空想地図は誰でも作れるのか?
しかしそんな空想地図、誰でも作れるのか、という疑問が湧くかもしれません。過去20回行いましたが、誰でも作れます。
下の写真は実際に使う空想地図シートですが、都市から田舎までの典型的な地図模様が印刷された紙と、山間部や農地、水域を表現できる色画用紙があります。(空想地図キットは、こちらのネットショップやマニアフェスタ、各種販売店でもお買い求めいただけます)小さな台紙の上に、これを切って、貼って・・・
思うままにハサミやカッターを使って、シートを切り出し、組み合わせを試行錯誤します。これだ、と思ったらスティックのりで貼り合わせてみましょう。
必要に応じてペンやラインテープで、道路や線路、川、大きな建物を描いていきます。「うーん、違うな…」と思ったら、また上から重ねて貼って、描いて…と試行錯誤すれば良いのです。だんだんできてくると、「こういう街を作ってみたい…」という衝動が生まれたり、「ん?ここは思ったようにできていない…」という至らなさに気づいたりします。
なにしろ見本も手本もありません。正解はないので惑うかもしれませんが、失敗を恐れず、直感に従いましょう。地図づくりに正解はないのです。(そして、まちづくりにも正解はないのです。)
できてきた地図を見て、そこにどんな人がいて、どんな生活をしていて、どんな歴史があるのか、考えてみましょう。自分で生み出しただけに妙な責任感が生まれ、もはやこの地域に対して少し他人事ではいられなくなります。そう、ここでこの地域全体への面的な想像力が働くのです。もちろんそれを踏まえて作り直しても良いのです。
故郷や過去に住んだことがあるところを思い出したものができることもあれば、想像した異世界、離れた時代のものができることもあります。整合性の合う現代の都市を空想することもあれば、現代の合理性で考えれば不整合の極みのような地図もできます。
重要なのは、それを現代の合理性で判断して是非を突きつけるのではなく、その地図が成り立つ合理性を考えることです。講評では、参加者の作った地図を、もう現実にあるものとして、どんな背景や歴史があって、どんなリアルな生活があるか、地理人の解説をしてから、地元の人(作者)の声を聞きます。
(所要時間の目安:2時間〜2時間30分)
次回の開催情報
未定ですが、開催する場合はFacebookページ(地理人)でお知らせします。「空想地図を作るワークショップ」のような名称でしたらこのプログラムです。
ワークショップを実施したい団体様へ
詳細はこちらからお問い合わせいただければと思います。